ミニマリズムがもたらすもの
ブログのようなレビュー 《ネタバレあり》
(つづき)
ファーンは、バイト先で出会ったノマドのリンダ・メイの誘いで
砂漠で開かれるノマドの集会に参加する。
そこには似たような境遇のノマド高齢者が集まっている。
私が気になる車中泊生活のデメリットの一つ、
トイレ問題の説明会も開かれていたけれど、
単にバケツの説明だったのでちょっと残念。
もっといいノマドグッズや、
立ち寄り先に排泄物の処理システムやサービスとかあるといいのになぁ。
他にも車ノマドのデメリットとして、
駐車場所の問題、車の故障などが出てくる。
アメリカだと駐車場所に関しては困ることは少なそうだけれど、
どこに駐車するか常に考える必要があるのはストレス。
故障は必ずあるだろうから仕方ないけれど、
本気の故障はめちゃくちゃ困る、すごいデメリット。
軽快に移動できるメリットの正反対に
針を振り切るほどのデメリットだなぁ。
YouTubeでたまにヴァンの改造動画を観るけれど、
わりと作業が多くて大変。
いろんな工程を踏んで、材料や費用も結構かかる。
そんな手塩にかけた車が使えなくなるのは、
単に車がなくなると同時に、“家”がなくなることだから
激しく切実な事態と言える。
移動することで、求人のあるところに行けることも考えると、さらに深刻。
なるほど、車は車中泊ノマドの生命線そのものなのだ。
砂漠の集会場所をみんなが去った後も、ファーンがその場にしばらく残った時、
彼女のヴァンがパンクしてしまい、替えのタイヤも持っていない。
砂漠地帯だから、歩いて修理屋に行くこともできないところだ。
彼女以外に唯一現地に残っていたノマド“スワンキー”に助けを求める。
このスワンキーも実在のノマドで、貫禄があり演技も自然でなかなか。
プロの女優相手に、長台詞とめまいなどのフィジカルな演技まで、
この人すごいなぁ。
スワンキーは、ノマド初心者のファーンに喝を入れる。
広大なアメリカの地で放浪するには、自身でリスクを想定して対策できなくては、
本当に生死を分けてしまう状況になりかねない。
パンクなどは、初歩中の初歩。
これは、辺鄙な地域に住んだりドライブしたことのある人には
「当然」と思うところだろう。
頼れるコミュニティも身内もいない状況なのだから、
大概のことは自力で対処する覚悟と姿勢がノマドには必要だ。
ところで、スワンキーは単に現実的な忠告をするためだけで登場していない。
彼女がファーンに、旅先で経験したツバメの巣の崖の話をする。
自然の中の美しい瞬間に触れること、
それがこの生を生きる真骨頂の一つだと私も思う。
スワンキーの語る情景を思い浮かべて、
幸せで胸が満たされ涙が出た。
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